「健康や美容にいい」と言われる発酵。積極的に発酵食品を摂ることを「発酵生活」と言うこともあります。しかし、「効果的に発酵食品を摂りたい」と思っていても、「納豆や味噌、チーズはわかるけど、他の発酵食品って??」という方も多いことでしょう。
そこで今回は、身近にある発酵食品を一覧で紹介していきます。発酵食品が体になぜいいのかも分かりやすく紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
発酵とは?
発酵とは、微生物の働きによって食品に起きる変化のうち、人間にとって有益をもたらす変化をすることを指します。似たような現象に腐敗もありますが、腐敗は微生物の働きによって腐ってしまうなど、人間に有害な変化が起きることです。
発酵によるメリットは、
- 食品のおいしさや風味がアップする
- 栄養価を高める
- 保存性を向上させる
ことなどです。
また微生物の働きによって、
- 腸内環境を改善する
- 抗酸化作用の働きを強める
ため、健康や美容にいいとされるのです。
具体的な効果・効能として、発酵食品に期待できるのは次の5つです。
- 腸内環境の調整
- 悪玉コレステロールの除去
- 抗酸化作用
- 代謝アップ
- ストレス軽減
発酵させるには微生物の働きが欠かせませんが、種類がいくつかあります。次の項目で見てみましょう。
発酵に欠かせない微生物の種類
食品を発酵させる微生物は、主に「カビ」「酵母」「細菌」の3つに分類されます。このうち、カビに含まれる麹菌、酵母、細菌に含まれる乳酸菌や納豆菌、酢酸菌について解説します。
麹菌
麹菌は日本の食文化を支える代表的な発酵菌で、湿度の高い東アジアや東南アジアにしか存在していないカビの一種です。日本の麹菌はコウジカビという名称で、日本の国菌にも認定されています。
味噌や醤油、酒、焼酎などを製造する際に使われており、プロテアーゼやアミラーゼ、リパーゼといった酵素を大量につくるのが大きな特徴です。それらの酵素によって素材がやわらかくなったり、旨味や甘味が引き出されることで美味しさがアップします。
乳酸菌
乳酸菌は、ブドウ糖や乳糖などを分解して乳酸を作り出す酸っぱい味わいが特徴の発酵菌です。牛乳からヨーグルトにすることで保存期間が長くなりますが、乳酸菌にはpHを下げて細菌の繁殖を抑えるという働きがあるからです。
乳酸菌にはビフィズス菌やガセリ菌、シロタ菌などさまざまな種類がありますが、主に善玉菌として腸内環境を整えるなどの働きをしています。
酵母
酵母は、糖をアルコールと炭酸ガスに分解する役割を持つ微生物です。空気中など自然界のいたる所に存在しており、さまざまな発酵食品に使われています。その種類は1000種類以上とも言われます。
ビールやワインなどのお酒の醸造やパンづくりにも使われていることがよく知られていますが、紅茶や味噌、醤油、漬物、納豆、塩辛など多くの発酵食品において酵母は重要な役割をしています。
糖が体内に吸収されるのを防いだり、腸の働きを活発にしたり、免疫力を向上させる働きが報告されています。
納豆菌
納豆菌は、その名の通り納豆づくりに使われる発酵菌です。枯草菌(こそうきん)という細菌の一種で、田んぼや畑、稲わら、枯れ草などに存在しています。過酷な状況でも生き抜く強い菌として知られ、胃酸に負けることなく腸まで届く上、善玉菌の活性化および悪玉菌の抑制などの働きをして腸内環境の改善に役立ちます。
酢酸菌
酢酸菌は、アルコールを酢酸に変える細菌の総称です。お酢をつくる際には欠かせない菌で、鼻にツンとくる酸味はこの酢酸菌の特徴です。pHを低下させるため防腐や静菌・殺菌の働きをします。お寿司にお酢を使うのはそのためです。
腸内にある免疫スイッチを刺激する役目があり、特に花粉症やアレルギー症状を抑制します。また、血糖値の上昇を抑えるなどの健康効果にも期待できます。
例えば、味噌は麹菌が大豆のデンプンをブドウ糖に分解するほか、脂質を脂肪酸とグリセリンに、タンパク質をアミノ酸に分解します。それらと酵母、乳酸菌が作用することで味噌になります。このように発酵菌によって、食品が美味しく変化してできたのが発酵食品ということなのです。
代表的な発酵食品一覧
日本人にとって発酵食品が身近なのはさまざまなカテゴリーの発酵食品があり、毎日の食卓に並ぶからです。特に味噌汁や醤油などは毎日食べる人が多く、馴染みのある食品です。
代表的な発酵食品を一覧にしたのが以下の表です。
項目 | 食品のカテゴリー | 代表的な食品、飲み物 |
発酵調味料 | 調味料 | 醤油、味噌、みりん、酢、塩麹、酒粕、豆板醤、など |
発酵食品 | 乳製品 | チーズ、ヨーグルト、発酵バター、など |
パン | パン | |
豆類 | 納豆、臭豆腐、など | |
野菜 | 漬物、キムチ、ピクルス、ザーサイ、など | |
魚 | かつお節、くさや、塩辛、など | |
肉 | 生ハム、サラミ、チョリソ、など | |
菓子・デザート | チョコレート、ナタデココ、など | |
発酵飲料 | アルコール飲料 | 日本酒、焼酎・泡盛、ビール、ワイン、ウイスキー、など |
そのほか | 甘酒、紅茶、プーアル茶、乳酸菌飲料、阿波番茶、など |
それぞれの食品について、どのように発酵が生かされているのか解説していきます。
納豆
稲わらで作った「わらづと」に蒸した大豆を入れておくと、天然の納豆菌が繁殖して大豆を発酵させます。そうしてできたのが納豆です。
納豆菌が繁殖すると、大豆のタンパク質や炭水化物が分解されます。これによって独特の味や香り、ネバネバ(粘性物質)ができ上がります。このネバネバは旨味成分のグルタミン酸の一種で、ネバネバが増すほど納豆の美味しさがアップします。
また、納豆になる発酵過程で作られるのが、血栓を溶かして血液をサラサラにする働きのあるナットウキナーゼという酵素です。そのほかにも納豆菌からさまざまな消化酵素が作られているため、納豆は健康維持や増進に役立つのです。
ヨーグルト
ヨーグルトは世界中で食べられている発酵乳製品です。牛乳だけではなく、ヤギや羊、馬などの乳を原料にしたヨーグルトが世界中で親しまれています。原料乳と乳酸菌のみで作るのが基本で、乳酸菌が乳糖を分解して乳酸を作り出します。この乳酸によって、ガゼインが固まることでヨーグルトになります。
牛乳にはタンパク質やカルシウム、パントテン酸、ビタミンB2などが含まれていますが、それらが発酵されることで消化吸収が良くなります。そのため牛乳よりも効率的に、栄養を体内に取り入れることができるのです。
甘酒
甘酒は日本独特の発酵食品で、日本最古の書物である「日本書紀」(720年)に登場するお酒がルーツとされます。炊いたご飯に米麹(麹菌)を入れて発酵させることでできますが、その過程で健康に有用なブドウ糖や必須アミノ酸などが作られます。甘酒が体に良く「飲む点滴」と言われているのは、こうした主要な成分が点滴に似ているためなのです。
【まとめ】美味しい発酵食品を毎日の食卓に取り入れて健康に
微生物によって生まれる、人間にとって有益な食品の変化を発酵と言います。発酵食品が注目されるのは、発酵することで旨味がアップしたり、健康に有用な栄養素が作られるためです。
今回のコラムでは、発酵食品の一覧を紹介しました。紅茶やチョコレート、ナタデココなど、発酵食品だと知らずに食べていたり、飲んでいたものもあるのではないでしょうか。
美味しく食べられるだけではなく、健康にもうれしい発酵食品をぜひ毎日の食事に取り入れましょう。