90種類以上の栄養素を含むモリンガは、世界で最も栄養価の高い植物の一つとされています。国際WEP(国際連合世界食糧計画)でも栄養価の高さを認めており、飢餓を救う植物として推奨しています。
その豊富な栄養価から世界中でスーパーフードとして親しまれていますが、日本国内ではあまり見かけない植物なので、「安全性に問題はないの?」「ネガティブな情報はないの?」など危険性が気になる方も多いようです。そこで今回の記事では、モリンガを摂取する際の危険性について紹介していきます。
「奇跡の木」モリンガとは?
モリンガは、北インド原産わさび科の植物です。1年で2〜3メートルほど成長する抜群の生命力を持っていることから、「奇跡の木(ミラクルツリー)」や「生命の木」と呼ばれています。5000年以上前から薬や美容、健康のために利用され、世界三大美人の一人クレオパトラが美貌を保つためにモリンガオイルやモリンガ茶を愛用していたというエピソードもあるようです。
日本国内でも沖縄県や鹿児島県、熊本県などで生産されており、モリンガ茶やモリンガサプリメント、モリンガパウダーなどに加工されて売られています。国内産モリンガの商品を通信販売やネット販売などで購入することもできます。
モリンガに期待できる効果とは
モリンガは、炭水化物(食物繊維)、タンパク質、脂肪などの三大栄養素に加えて、ビタミンやミネラルなども豊富に含んでいます。含まれている栄養素の種類は90以上で、しかも豊富かつバランスが良いのが特徴です。例えば、ビタミンB6は豚肉の1.6倍、ビタミンCはオレンジの1.3倍、食物繊維はレタスの1.8倍などとなっています。
そのためさまざまな効果・効能が期待されている植物なのです。代表的なものを、以下の表にまとめました。
期待される効果 | 栄養素 |
ダイエット | アルギニン、イソロイシン、など |
便秘改善 | 水溶性・不溶性食物繊維 |
リラックス効果、良質な睡眠 | GABA |
エイジングケア | ポリフェノール、抗酸化ビタミン、など |
高血圧の抑制 | カリウム、など |
脳機能の向上 | トリプトファン |
炎症の緩和 | β-シトステロール、など |
血糖値の安定 | ケルセチン、食物繊維、イソチオシアネート、など |
アレルギー症状の緩和 |
アミノ酸、各種ビタミン、ポリフェノール、など |
コレステロール値の改善 | ビタミンB群、GABA、など |
抵抗力の向上 | 各種ビタミン、亜鉛、銅、など |
このように健康や美容に効果的な情報が期待できますが、良いことばかりではありません。
体質や体調などによって、体に悪影響を及ぼすこともあるようです。次の項目で見ていきましょう。
モリンガの危険性
モリンガは豊富な栄養素が含まれているため、体質や体の状態などによって反対に体調が悪くなることもあります。報告されている事例をもとに、モリンガに潜む危険性について紹介していきます。
妊婦の方は流産の危険性がある
厚生労働省の「Moringa oleifera(いわゆるモリンガ、ワサビノキ※)について」によると、下記のような報告がされています。
「極めて限られた情報として、モリンガの葉の抽出物を妊娠ラットに対し高用量を経口投与したところ、流産がみられたとの文献報告がありました。」
そのため、妊婦の方がモリンガを摂取すると、流産の危険性があることを指摘しています。これはモリンガにアルカロイドが含まれているからです。アルカロイドとは、植物に存在する窒素を含む塩基性成分の総称です。少量で強い生理作用を持ち、古くから医薬や農薬などとしても使用されています。
主なものは下記になります。
- ニコチン
- モルヒネ
- コカイン
- キニーネ
- カフェイン など
モリンガの場合は、アルカロイドの一つであるカフェインが根に含まれているとされます。厚生労働省では「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」において、妊婦や授乳中、妊娠を予定している女性の1日のカフェイン摂取量は最大300mgとしています。
また子宮収縮を誘発する可能性があることも報告されていますので、女性疾患を患っている方もモリンガの摂取には注意するようにしましょう。
胃痛など消化器系に問題を起こす危険性がある
豊富な栄養素を持つモリンガですが、その強力なパワーから大量に摂取すると胃の不調や便が緩くなるなど内臓に強い負担をかけてしまう危険性があります。そのため必要以上に摂取しないようにしましょう。
多くのモリンガ商品には1日の目安摂取量が記載されています。その範囲内での摂取なら体には効果的でしょう。モリンガに限らず、健康が期待される食品は1日に大量摂取しても大きな効果は得られません。毎日コツコツ続けることが大切ですよ。
低血糖の方はさらに数値が低下する危険性が
医学誌「Nutrients」(2020年)では、モリンガを摂取することで血糖値の上昇が抑えられると報告しています。これは、イソチオシアネートなどの化合物、ケルセチン、食物繊維などが関連していると考えられています。ヒトを対象にした研究はまだ少ないようですが、血糖値が高めの方には有効と考えられます。
しかし、反対に血糖値が低めの方は大量に摂取することで低血糖に陥ることもあり、注意が必要と考えられます。また糖尿病などで血糖値を下げる薬を服用している場合は、血糖値が下がりすぎる危険もあります。
商品パッケージの1日の摂取目安量をしっかり守って、効果を最大限に得られるよう毎日少量をコツコツ摂りましょう。
腎疾患の方は高カリウム血症の危険性に注意
モリンガはカリウムの含有量が多いため、腎疾患の方は注意が必要です。
カリウムは通常、ナトリウムを体外に排出して血圧を調整したり、筋肉の収縮の調整といった重要な働きをしています。そのため、高血圧の方の血圧を下げることに役立ちます。しかし余分に摂取したカリウムは腎臓から尿中に出ていきますが、腎機能が低下していると尿から排出されるカリウムが少なくなります。そのため、カリウムが体に溜まってしまい、高カリウム血症になってしまう危険性があるのです。
高カリウム血症になると、以下のような症状が出てしまいます。
- 手足や唇のしびれ
- 全身のだるさ
- 不整脈 など
高カリウム血症は、最悪の場合、死亡に至る危険もあります。腎機能が低下している方は、カリウムが多く含まれているモリンガの大量摂取は控えましょう。
1日摂取量の目安をきちんと守ること、はじめは目安の半分程度の量を様子をみながら始めることが大切ですよ。
医薬品を服用中の方は副作用が起きる危険性も
モリンガ種子由来グルコモリンギンを配合している機能性表示食品の情報では、下記の医薬品を服用している場合は「注意が必要」としています。
- 糖尿病治療薬
- 肝臓で代謝される薬(シトクロム P450 3A4(CYP3A4)の基質となる薬)
- 降圧薬
- レボチロキシンナトリウム水和物[甲状腺疾患治療薬・甲状腺ホルモン製剤]
前述したように、血圧低下や血糖値の低下といった効果が期待できる分、糖尿病や甲状腺疾患、高血圧に関する医薬品を服用している場合は、モリンガの摂取によって副作用が起きる可能性があります。モリンガの摂取を希望する場合は、医師や薬剤師などに相談するようにしましょう。
【まとめ】モリンガは1日の摂取目安量を守って危険性を回避しよう
今回はモリンガに潜む危険性についてまとめました。栄養素が豊富に含まれていて、美味しい商品も多いため、幅広い健康・美容効果が期待できますが、その分過剰摂取になりやすい傾向があるのもモリンガの特徴です。
特に持病を持っていたり、薬を長期的に服薬している方は体調の悪化を招くこともあります。そのため、医師や薬剤師などの専門家に、モリンガの摂取を相談するようにしましょう。
健康な方でも、何事も大量摂取は禁物です。適量を毎日続けてこそ最大限の効果が期待できますので、コツコツと続けましょう♪